2023.03.20 UPDATE
作品と向き合いながら、ともに生きる。夫婦の物語
摩周北創窯
林 保男さん・智恵子さん
森の中の「摩周北創窯」
弟子屈の住宅地のひとつ、美留和(びるわ)の森を進んでいくと、「北創窯」と書かれた手作りの看板に三角屋根のお家があります。
車を降りると、住宅の背後には森が広がり、小鳥のさえずりだけが響いていました。
耳を澄ませて、ゆったりと深呼吸したくなるような、そんな森の持つ癒しの空気が周囲を包み込んでいます。
林さんご夫妻はおよそ15年前に、京都から弟子屈へ移り住んで来ました。
現在、「摩周北創窯」「土と友」として、ご夫婦それぞれで作品を作られており、道の駅摩周温泉にも取り扱いがあります。
工房には、見学や陶芸の体験に遠方からお客様が来ることも多いそう。陶芸の世界を深めながら、自然豊かな弟子屈での生活を楽しまれています。
おふたりが陶芸の道を志したのは20年ほど前のことで、旅行で訪れた三重県で偶然目にした伊賀焼に心奪われ、それから毎週土日窯元に通い続け、陶芸を学びました。5年が経過したころ、当時息子さんが北海道内に進学していたこともあり、北海道で陶芸をやろうと思い立ったといいます。
移住の決め手は、勢い
―――どうして弟子屈に住もうと思ったのでしょう?
智恵子さん:はじめは帯広近辺で3〜4年も探していたのですが、ある時いい物件があるからと車に乗って案内されたのがこの場所でした。
何箇所か周ったけれど、この場所にきた時に一目見て「ここにしよう」と決めました。勢いです(笑)
保男さん:ここは土地だけだったので、設計も二人でしました。作陶や窯を置く場所も含めて、自分たちの理想とするお家の設計図を書いてお願いしました。
当時はこの近辺に多くの土木工事が入り住宅地が作られたいわゆる移住ブームから5年ほど経過したころでした。20年前は川湯も人がいっぱいいて宿泊客でごった返していた時代。それから少し経ったころですね。
寒さと虫は避けられない?!
―――住み始めて大変と感じたことはありましたか?
保男さん:除雪をしたことがなくて、引っ越してきたばかりのころは一輪車に雪をのせて、運んでいました。今考えるとおかしいけれど、でも遊び半分で楽しくやっていましたよ。
そしたらご近所さんに「それじゃあ大変だよ」と言われ、その時に初めて「ママさんダンプ」を教えてもらいました。
今は体を壊したら大変なので、除雪は頼んでやってもらっています。
智恵子さん:もう一つ大変なことは、虫ですね…。蚊はそこまでいませんから本州に比べると生活しやすいかもしれませんが、ハエやアブは結構います。
刺されると結構腫れてしまうので、網がついた帽子に長靴と手袋で完全防備しています。
不便さとどう向き合うか
―――冬はどんな風に自然を楽しんでいますか?
智恵子さん:歩くスキーが趣味なんです。今玄関のところにもスキー板があったでしょう。
すぐ裏の森で散策を楽しんでいます。二人でいくけれど、別々で行動してそれぞれ自由に歩いていますよ。雪のない季節はジョギングをしています。
それから家ではいつもYoutubeで体操の動画をみて、身体を動かすようにしています。
―――かなり身体には気を遣われているんですね。
保男さん:ここは病院が遠くて。大きな病院にいくのに1時間かかりますから、やっぱり通院は大変だなと思います。
1時間集中して運転するととても疲れますね。JRもありますが、本数は少ないので時間を合わせるのが難しいですよね。
直感的でここだ!と決めた場所に15年以上住まれている林さん夫妻ですが、年齢を重ねて大変と思うことも増えてきているそう。除雪は業者にお願いしたり、買い物は宅配サービスを利用をして無理をしないよう上手に暮らしているようです。
弟子屈町という環境で陶芸の世界の探求する
――― 大好きな陶芸と向き合える今の生活はどう感じていますか?
保男さん:それでもやはりこの年で陶芸ができる幸せを感じています。ご注文をいただいて制作をしたり、工房で陶芸体験を受け入れたり、忙しい毎日を過ごしています。
これからさらにもう少しスペースを作って、陶芸を教えられる環境を整えようと計画しています。
――― 自然に囲まれた環境での制作活動を理想とする人は多いと思いますが、やはりそれは作品にも影響していますか?
保男さん:この環境でやっぱり一番いいのは制作に没頭できることですね。
この青い色は摩周湖の青をイメージしています。ここで陶芸を始めて7年目でやっとこの模様が出せた時は、涙が出るくらい嬉しかったです。
――― 最後に、弟子屈町に移住を検討している方に一言お願いします。
保男さん・智恵子さん:今もよく住んでいた京都に帰りますが、北海道という環境から改めて京都に帰るといつも発見があります。見てみたいもの、行ってみたい場所にはやっぱり実際に足を運ぶべきだと思います。
特に若いうちからいろんなことを見て、体験する。それから失敗することが大切だと思います。